【コミック・イラスト絵柄】
流行の歴史と今後のスタイル

 
コミック・イラストの絵柄の流行と衰退、これから10年の間に来るスタイルの予測である。


                  



 日本におけるコミック・イラストの絵柄にも歴史と循環がある。
 そして、
四世代を中心軸に、これのワントーン上と言う風に巡り巡っている
 
その世代にデビューしたマンガ家・イラストレーターの絵柄と、1ページの画面全体を思い出してみてほしい。大概はこのパターンに入っているはずだ。
 簡潔に、その世代ごとの主な特徴を述べてみる。


                  


1st 「過剰デフォルメ」世代

 
絵柄のスタイル・・・丸っこい体のラインに丸っこい顔、パーツ。時に顔の半分をも占める大きな丸っこい目。簡略化された鼻。髪の毛の描き方は、輪郭だけと言う感じ。善人キャラであれ悪人キャラであれ、全体的に親しみやすい顔つきをしている。
 
 
原稿用紙の画面全体・・・ペン線とトーン効果とベタがメリハリ効いた感じ。

 ★出現・ブーム・・・’50〜’60年代



2nd 「リアルビジュアル」世代

 
絵柄のスタイル・・・基本的に描きこなされたデッサン力に基づいた上でのデフォルメであり、かなり立体的。背景、服などの表現もほぼ総て手描き。美男・美女、醜人キャラなどがシビアに描き分けられている。
 
 
原稿用紙の画面全体・・・マンガの1ページと言うよりも、1枚のペン画美術。スクリーントーンは少ないか、無い。

 ★出現・ブーム・・・’60〜’70年代 



3rd 「ライトタッチ」世代

 
絵柄のスタイル・・・’50〜’60年代の「過剰デフォルメ」と’60〜’70年代の「リアルビジュアル」の中間であり、縦長および四角っぽい感じの目・切れ長の目が特徴。
 
 
原稿用紙の画面全体・・・やはり「過剰デフォルメ」と「リアルビジュアル」の中間的印象であり、特に人物の部分(髪、服など)のペン線の使い分けがハッキリして来た感じである。

 ★出現・ブーム・・・’70〜’80年代 



4th 「同人系」世代

 
絵柄のスタイル・・・いわゆる同人作家が続々とプロデビューした時代であり、「ライトタッチ」の延長、と言う雰囲気の絵柄。しかし決定的に違うのは、他の要素、ここでは当時の空前のアニメブームにのっとったスタイルとその進化形である事だ。
 
 
原稿用紙の画面全体・・・色的に極めて濃いか薄いかのどちらかで、それはスクリーントーンの多用による所が大きい。ペンによる立体的な表現は簡略化されている。描き込んだ作風であっても、やはりスクリーントーンが過剰である。 

 ★出現・ブーム・・・’80〜’90年代



                 
絵柄のスタイル一周終了、ワントーン上での回帰




2nd-1st 「CG礼賛・第二次過剰デフォルメ」世代 (現在:’50〜’60年代スタイルの回帰

 
絵柄のスタイル・・・ いわゆる「萌え」の絵柄がこれである。目は顔の半分もしくはそれ以上、丸っこいスタイル、丸っこいパーツ、鼻が簡略化されている所は、「過剰デフォルメ」 世代と全く同じである。つまり、CGと言うテクニカルな部分とキャラの顔の変化以外は、全く持って、’50〜’60年代に戻って来ているのである。
 つまりこの世代は、’50〜’60年代の絵柄の、ワントーン上のスタイルなのだ。
 ・・・と言う事は、簡単に次の流行絵柄が予測出来るのである。ジャンル問わず、あらゆるものは一周して戻っているのだ。
 
 
原稿用紙の画面全体・・・ 手描きアナログ部分は敬遠される傾向にあり、スクリーントーンが無ければほぼ真っ白状態になりそうな感じである。それとパソコンで原稿用紙を埋めるマンガ家・イラストレーターが増えているため、先駆者のように、アナログからCGも描きこなすと言う「段階」を経ていない作家が多い。

 ★出現・ブーム・・・’90〜’00年代



2nd-2nd 「第二次リアルビジュアル」世代 (数年後から:’60〜’70年代スタイルの回帰

 
絵柄のスタイル・・・数年未来の話なので、まだ確立した人物は存在しないが、おそらくこれに該当するだろうイラストを描く人物を知っている。たまに出版物(同人系雑誌ではない)の読者投稿や、当人のサイトで見る事が出来る。
 が、今の時点でこのタイプの絵を見ると「とにかく凄く上手いけど、何か古い」の一言に尽きるのではあるまいか。
 
 しかし、別の視点で彼女のイラスト作品を見ると、他に類を見ない技術力と細密さ・華やかさである。筆者はこのタイプの絵柄・表現を他に見た事が無い。色々探しても全く見つからないのだ。
 
 遠目に見たらスクリーントーンを使っているかのように見えるが、そうではない。全て彼女自身の(おそらく)丸ペンで描き切ったものだろう。スクリーントーンのように見えて実はスクリーントーンではない。極めて斬新ですら思える。

 特徴として予想されるのは、トーンやCGを一切使用しない、柄もトーンではなく手描き、背景とのメリハリが付いている、などである。
 リアルビジュアル世代と言っても、90年代終盤から既にあるCGリアルスタイルではなく、ここでは完全にアナログ・リアルビジュアルである。アシスタントもこの、基本的アナログ技術を持っている事が要求されるだろう。

 
原稿用紙の画面全体・・・現代の画風とアナログ技術の結集のような感じのスタイルで、前回のリアルビジュアル世代よりはずっと華がある雰囲気である。点描・線描がより繊細に表現されている。

 ★出現・ブーム・・・’00〜’10年代(予測)


                                   


 ☆総合視点と余談

 
現在から見て「絵柄が古い」と感じる作風は、主な4つの段階(「過剰デフォルメ」→「リアルビジュアル」→「ライトタッチ」→「同人系」の流れの繰り返し)の、ワントーン上の作風からズレているためである、とも言える。
 先にも述べた通り、
今の「萌え」絵柄は、まるっきり’50〜’60年代スタイルの回帰なのである。華があるか無いかの違いで、根本的スタイルは同じなのだ。つまり、ファッションや他のエンターティメントなどと同様、絵柄のスタイルも巡り巡って来るのである。

 一方、
「ライトタッチ」世代(’70〜’80年代)には、一時的だったが強烈なインパクトを残した「リアル絵コミック」が売れた。北斗の拳」「シティーハンター」(いずれも80年代)などがそれである。
 しかし、やはり一般的に好んで描かれたのは依然「
ライトタッチ」のスタイルであり、上の2作品の亜流は殆ど出なかった。
 そして、その流れのまま最後の世代・「同人系」に移行していくのである。

 「
今の絵が新しく、また古めかしいスタイルが戻って来るのはありえない」、と言う声もあるだろう。筆者も実はそうだった。
 しかし考えてみれば、絵柄そのものは戻っていなくても、
その絵柄のスタイル・特徴はやはり一巡している
 
 例えば20年位前に(CGと言う、人間ではなくパソコンが描くテクニカル技術を予想から抜いても)、やたら目が大きくて幼児趣味な顔とスタイルで、その顔の輪郭も丸っぽく鼻も思い切り小さくて・・・と言うような、’50〜’60年代のスタイルを想像すると、果たしてブームと言うレベルとして受け入れられただろうか?
 それと同じである。



                                   



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一般的に流行した絵柄とその特徴を挙げている。
 
出現・ブームは、二つの年代に跨っているものだ。これは、前の世代と該当世代が混在した年数も含んでいるからである。
 
あくまで流行の絵柄であり、’50年代以前の新聞マンガの絵柄は省く。